俺はなんばんぼし

釣具屋と不動産屋の

第29回「2020年4月期 生存報告白書」

当駄文は、東京都E区在住、合間芋子(アイマイモコ・仮名)の生存を証明、報告するものであり、氏の性格傾向としてのプリオリ・生来的な怠惰且つ極く一般的な社交的観念の欠如に拠り、敢えて記録として記録された記録であるのである。
主旨は、氏の生存の報告、この一点に尽きるものであり、他意又は別の解釈を試みる余地は皆無である。
背景として、昨今の新型コロナウイルス(Covid-19)の感染拡大及びこれに伴う様々な、それはもう実に様様な影響が全地球的に及んでいるにも拘らず、年来の朋輩諸賢へはおろか、身体髪膚を享けた父母へも自らの心身に於ける健康状況、金銭的状況、その他日常生活に於ける他愛なくもささやかな連帯感を齎す話題、情報の提供を怠ったことが挙げられる。
氏はかつて大学生の身分であった頃、刻苦勉励すべき社会的役割を有していたにも拘らず、然るべき場所機会、つまるところ大学へ足繁く通うことを放棄し、全国民の血税を水泡に帰させた挙句、数少ない学友に氏の姿が大学構内であまりにも見受けられない為に、氏が既に泉下の人となっている、と思わしめた事案も発生している。そんなことではダメなのだ、とバカボンパパよろしく当時の担当教官に諭され、氏の安直な精神は一時これに従順な態度を以って応じるも、生得的堕落は氏の心身から抜けることはなく、此度の未曾有ともいえる事態に於いて、またも氏の悪癖が露呈したものである。

かつてこの国では次のような諺が語られたものであった。
「無沙汰は無事の証拠也」、現代に即していうに「便りがないのは元気な証拠」という民間に言い伝えられる文句である。
連絡手段が乏しく、葉書、電報、伝書鳩等に限定されていた旧時代であれば手間経費を斟酌して首肯すべき文句であるが、通信逓信制度の発達した2020年現在に於ける方途は多岐に亘り、且つ手間経費に於いても負担は旧時代のそれと比較すれば雲泥万里の感がある。
この事実に鑑みるに、氏の報告不精は淪落した精神の為せる所業と断ずべきであり、即刻改善さるるべき傾向の性分である。

以上より、氏には2020年4月を始期として常日頃の生活記録を綴り、逐一関係各所へ報告を行う事を命じる。期間は、永遠が半ばを過ぎる迄。異議は一切合切、認められぬ! 此れにて閉廷! デデデドン!

 

こうして私は生活記録、いわゆる日記をつけ、報告することになったのです。

 

4/1(水)
保険の勧誘電話。保険は好きじゃないし、こういう勧誘の営業電話はもっと好きでない。ため息。

4/2(木)
三好とTel。相変らない。「tele-」の意味を知る。「離れた−」を意味する接頭語。

4/3(金)
今日見かけた野良猫 ×1

4/4(土)
夜に犬の散歩、ランニングをする人が増えた感がある。外出自粛を要請されているため、顔の見えにくい夜なら気が休まるのだろう。っていうか、「自粛」を「要請」するって日本語は変じゃないか?

4/5(日)
フェリ助、きりん氏と門前仲町界隈を周遊。酢レモン購入。トルストイ「人間には沢山の土地が必要か」読む。

4/6(月)
玉木さんの突き上げが甚だしい。

4/7(火)
アパートでのテレワークを開始。電気ケトル、壊。

4/8(水)
「豆は美味い」としか書いていない。

4/9(木)
サボタージュ

4/10(金)
体重が久しぶりに70kg台になる。地球が温暖化しようと寒冷化しようと、痩せていた方が自分の場合は良い。中上健次水の女」読む。

4/11(土)
ランニングを欠かさない三好がなぜデブなのか、判明する。映画「理由なき反抗」あの坊ちゃんはなにかしでかすと思って見ていたらやっぱりやった。梅崎春生読む。

4/12(日)
サボタージュ

4/13(月)
豚は解剖学的に、上方向に首を曲げることができない。つまり、豚は空を見上げることができない。

4/14(火)
サボタージュ

4/15(水)
サボタージュ

4/16(木)
昨日の食事内容を思い出せることは大切だ、みたいな。

4/17(金)
誂えていたメガネが完成したので受け取りに行く。やっぱりメガネはセルロイドに限る。町田康「浄土」読む。

4/18(土)
朝から札幌に帰る予定だったが、空港に着いて欠航を知る。生涯、LCCには乗らぬと心に誓う。

4/19(日)
猫は大熊猫を恐怖する。パンダ。大きな熊のような猫、それがパンダ。

4/20(月)
ローソンで猫の写真をゲンゾーする。「のび」をしようとしている瞬間の一枚がオキニ。大江健三郎「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」読む。

4/21(火)
生まれて初めて、道を聞いてきた人に間違った道を教える。

4/22(水)
サボタージュ

4/23(木)
大阪のパチンコ店が「営業自粛要請」に従わないとして騒がれ始める。これを記事にするマスコミに疑問。池澤夏樹「母なる自然のおっぱい」読む。

4/24(金)
サボタージュ

4/25(土)
部屋掃除。実家では掃除などした記憶がなく、全て母が行っていたのだと思い、心中で詫びる。遠藤周作「沈黙」読む。

4/26(日)
サボタージュ

4/27(月)
最近同じものばかり食べている。蕎麦とキャベツ。

4/28(火)
「フリチン」と「フルチン」について考える。先頭の帰りに飲む物はエネルゲン。空き缶が捨てられずに、連鎖する罪悪を思う。

4/29(水)
頻繁に行くローソンで常連の一人として認識されていることが判明する。店員のじいさんは大学のM教授に似ている。

4/30(木)
タイの社長とこじれる。今日見た野良猫 ×2

 

 

以上が4月の生存報告となりますであります。
7回、サボタージュがありましたが、その日も何かしらして生きていました。雨に降られるとか。
5月はサボタージュがないように頑張ろう、と思い実行するのが健全なる魂というものですが、既に5/1〜3とサボタージュしてしまいました。こうして私は命果てるまで、どこかしらでなにかしらのサボタージュをやめないでしょう。ポタージュ。かぼちゃの。

 

次回は関西のオガサワラ。テーマは自由です。

文責:合間芋子※

※小学か中学の歴史の授業で、遣隋使の小野妹子が出てくるが、現代の女性名のようだけれど彼は男性である、という小噺を必ず教師はするものだ。この芋子も同じく男である。