俺はなんばんぼし

釣具屋と不動産屋の

第36回「埼玉」

埼玉について書こうと思う。

 

東京の不動産屋がテーマを「埼玉」に指定したためである。

無から有を創造してください、と来たのだ。なんとまあめちゃくちゃな事を。

 

埼玉、と言えば一番に頭に浮かぶのは埼玉県であろう。

次に来るのはワンパンマンの主人公の苗字。これは正確にはたしか「さいたま」だったため、埼玉に該当するか怪しい。

その次は「翔んで埼玉」という作品群である。私は映画の宣伝からこの作品を知ったわけであるが、漫画も映画もご覧になっていないため、この辺からは広がらないだろう。

ちなみに、wikipediaによると、英訳は

Fly Me to the Saitama

コピペしたらフォントがおかしくなった模様であるが、これはこれでおかしみとして残しておこう。英訳するとmeが入るんだなあ、と思った次第である。

私は英語がからきしであるが、一般的にいって高学歴である。しかし英語はからきしだ。人には得手不得手がある。なんとも鼻持ちならない感じだが、まあ私とは、そういう人間なのだ。

英語というものは非常に難しい。何せ覚える事が多いし、私の人生には純日本人と日本語の話せる帰国子女と、日本語の話せるハーフと、日本語の話せる外国人が大半を占めていた。あとはわかるね。

英語で特に苦戦したのは省略である。主語だとか、目的語だとか省略してくる。なんで省略すんだよ!と高校生の時分は憤ったものだ。しかし、私の日本語も省略だらけである。これに気が付いたのは受験英語を終えてから。その時は目からうろこが落ちたものだ。そりゃそうだ。なので、全国の英語教師諸氏は是非、受け持ちの生徒にこう助言してただきたい。

「自分の日本語を振り返ってごらん」

そうすると、英語が身近に感じ、私の様なあんぽんたんを何人か救えるかもしれない。

 

話を戻すと、「FLY Me to The SAITAMA」

日本語の英訳なので、意訳が含まれていると思うが、いったんこれを教科書英語的に和訳してみたいと思う。

英語の授業を思い出すと、たしか英語には必ず主語と動詞が含まれているはずである。

そして、まず動詞を探せ、みたいな事を言われた気がするので、動詞を探すと、

恐らくFLYなのではないか。動詞が文の頭にくる。まいったね。主語は何だろう。

 

主語は置いておいて、このFLYに着目する。意味は多分、飛ぶとかハエなんだろうけど、たしか「The FLY」という映画を知っているので、たぶん名詞だったらtheとかaとかの冠詞が付くような気がする。なので、ここは動詞で良さそうである。

直後にmeが来ている。meは名詞?名詞としよう。私の、とか私も、の意味なのかな。me tooは、私も。でもこれはtooが、も、の要素な気もする。it's meなんかも耳なじみがある。それは私の、かな。となると私の、となりそう。あ、ここでスターウォーズのキャラがMeはね、と言っている事を思い出した。Meはね。私のはね。意味が違ってる気がする。まさかMeの意味で躓くとは。私の、という事にしておこう。

確か動詞には自動詞と他動詞があって、動詞の直後に名詞が来れるのは他動詞だけだったような。となると、FLY me は一群としてとらえられそう。主語がない気がする。

え、meは主語になるのか。

となると、動詞が主語の前に来る倒置法かな。日本語でいうと「知ってるぜ、俺は」的な。となると、FLY me の訳は、「飛ぶぜ、俺のは」。一個候補が出ました。何が飛ぶんだ。

 または、主語の省略が起きている可能性がある。

確か、英語は

SV

SVC

SVO

SVOC

SVOO

の5文型しかない、みたいな事を英語教師が言っていた気がする。

で、FLYが動詞だとすると、その後にはmeの一語しかない。

このtoは直後にThe Saitamaという固有名詞が来ているため、to不定詞ではなく、ただの前置詞であろう。そう、to 不定詞は確かCになって、動詞の原形が来るはずだ。思い出してきた。となると、to Saitamaは「埼玉へ」と素直で良さそう。

だいぶ絞られてきた。文型で考えると、SVCかSVOの2択になる。Cって補語だけど、意味を思い出せない。補語ってなんだ。日本語的に補う、なので、たぶん動詞の意味を補間するような言葉なのでしょう。動詞を修飾できるのは、形容詞なのか副詞なのかよくわかんないけど、名詞ではなさそうである。そのため、文型はSVOと断定する事とする。ちょっと見えてきたぞ。

Oは目的語だから、~を、とかの、~にあたる部分が目的語。Meが目的語だとしたら、「私のを飛ぶ」

これは変な気がするので、ちょっと工夫して、

「私のを飛ばす」

良さそう。

誰が?

まいった。主語の省略だ。主語になるのは、I,You,We,they,it とかだった気がする。思い出せない。一個ずつ当てはめてみると、

主語がI:「私は私のを飛ばす」

なんとも詩的でる。悪くない。セルフィーな感じが良い。私の何を。省略が発生している。

 

主語がyou:「あなたは私のを飛ばす」

これもよいね。パートナーシップを感じる。

 

主語がwe:「私たちは私のを飛ばす」

集団性を帯びてきた。

 

主語がthey:「彼らは私のを飛ばす」

達観している人にも見える。

 

主語がit:「それは私のを飛ばす」

それ、という暗示性がいよいよいいね。

 

ここまでのまとめを行うと、

「飛ぶぜ、俺のは埼玉へ」

「私は私のを埼玉へ飛ばす」

「あなたは私のを埼玉へ飛ばす」

「私たちは私のを埼玉へ飛ばす」

「彼らは私のを埼玉へ飛ばす」

「それは私のを埼玉へ飛ばす」

 

どれも良さそう。

 

一転、FLY me to までで、慣用句。この辺が濃厚そう。でも私はこの慣用句の意味を知らない。ここでインターネットで FLY Me To を検索すると、出てきました。似たような用法が。

Fle me to the Moon

古い曲のタイトルであるみたいだが、今回の形状とまったく同じだ。そして、wikipedia の和訳を見ると、

「私を月に連れて行って」

 

まんま真似をすると、

「私を埼玉へ連れて行って」

主語がいない気もするが、良さそう。情婦の悲痛な願いが聞こえてくるよう。

 

ここまでで気に入ったのは、

「飛ぶぜ、俺のは埼玉へ」 

「私は私のを埼玉へ飛ばす」

「あなたは私のを埼玉へ飛ばす」

「それは私のを埼玉へ飛ばす」

「私を埼玉へ連れて行って」

 

この五傑となった。

私が英語を苦手とする理由がお分かりになっただろうか。

 

 

ここで日本語を考えていく。

「翔んで埼玉」

まったく意味不明である。

主語がない。おそらく、作品の主人公か、読んでいる読者が主語にあたるのではないか。まてよ。倒置法で、埼玉が主語で強調されている可能性も捨てきれない。

動詞。翔ぶだろう。

普通に読んだが、やっぱり駆け上がるような飛翔のイメージがあるから、物理的に飛行機が飛ぶ、というよりも何か将来とか概念的なものの飛躍の意が込められている様な気がする。

 

次にんで。 なにせ口語だと思うので、アクセントによって意味が異なる気がする。

ぱっと思いつくのは、まず願望。翔んでくれ、のくれが省略されている。

あるいは、経過。翔んだのち、みたいな。翔びそしてそののち。死んで有名になる、のんで、的な用法。こうなると翔ぶ前の状態が気になる。

 

そして、埼玉。埼玉はおそらく地名か人名。地名であれば県か市を表している。あるいは苗字。埼玉という人全てを表しているのか、登場人物に埼玉、というやつがいるのか。あるいは埼玉、という語が違う意味を表している可能性も否定できない。例えば札幌の「すすきの」と言えば単なる地名であるが、北の横綱と呼ばれる夜の街である。この付帯する意味があるかもしれない。埼玉は埼玉県で考えることとする。私は埼玉とはほぼ接点がないため、イメージはあまりないが、ない頭を振り絞ると、海がない、ベットタウン、秩父は山、奥秩父はもっと山、春日部には野原一家、たまに起きる凶悪事件。このくらいだ。知らないとは恐ろしいものだ。インターネットで少し調べると、

 

埼玉県(さいたまけん、Saitama Prefecture)は、日本関東地方に位置する県庁所在地さいたま市

首都圏を構成し、都道府県別の人口は東京都、神奈川県大阪府愛知県に次ぐ全国第5位。人口密度は東京都、大阪府、神奈川県に次ぐ第4位である。県の財政力指数は全国第4位[1]令制国武蔵国の一部に相当する。面積は第39位で[2]可住地面積比率は第3位の規模である。は、東秩父村の1村のみである。(wikipediaより)

 

強いね。47都道府県top5には確実に入っている強さ。何をもって強いのかはよくわからないが、この文章を読むと強く感じるよね。ただ、やはりTOKYOという不動の首都があるがゆえに1位には絶対になれないという歯がゆさがあるだろう。近隣でいえば神奈川県がライバルかな。しかし神奈川は横浜、というブランドを持っている。横浜vs春日部。野原一家が横浜に拮抗している。すごい力だ。とはいえ、一般的に言えば横浜に軍配が上がるだろう。この点で圧倒的に不利なのだ。全国で見るとかなり強いが、首都圏で比べるとなんだかくすぶっている愛着の持てる県な気がしてくる。そんなイメージである。

 

ここまで、いろいろ考えたが、やっぱり原作なり映画を見なければタイトルの意味は分からない気がする。これを英訳すると、「FLY me to the Saitama」

英語と翔んで埼玉に造詣が深い人はこの英訳が限りなく近いか、を私に教えてほしい。

こんな簡単に見える一文でも、タイトルとなると、意味を考えなければならない。これはGoogle翻訳にはまだできないのではないかな。漫画なり小説なり意味を多分に含むものを機械学習しだすのはまだまだ先な気がするので、翻訳の仕事は全然AIには奪われないのではないか、とのんきなことを思う次第である。ただ、それっぽいのはあっと言う間にできるだろう。世間がそれっぽさを重要視している時代に突入しているのであれば、もう手遅れだ。それっぽいものと、やや、これは芯がありそうだぞ、というものを見分ける力は、生きるうえで重要なんじゃあるまいか、諸君。正解は一つではないのだ。

 

 

なんとなくそれっぽく書けた気がする。私はこんな感じで思考をしている。

 

今日はこれまでという事で。

 

おがさわら(大阪、30、無職)