俺はなんばんぼし

釣具屋と不動産屋の

第38回「辛ラーメンのおいしい食べ方」

辛ラーメンをご存知だろうか。カップ麺で見たことがある人が多いのではあるまいか。かなり前に一時世相でも流行した気がする。

とにかく辛いラーメンで、私はスーパーに売っている袋麺を毎回買占めて好んで食べているのだ。

辛ラーメンは単体でもおいしいはおいしいのだが、何か物足りないのだ。私はコク、みたいなのが足りないと思っており、鶏ガラのだしとみりんを少々を追加し、あとはチンゲン菜やらホウレン草やら緑の野菜をぶち込むのがお気に入りであった。

 

辛いラーメンと言えば、山岡屋の辛みそラーメン大盛大辛多め濃いめ固めだろう。大学時代になぜかこの山岡屋の辛みそラーメンを大盛大辛で食べる風習があり、よくお腹を痛くしていたものだ。初めはこの辛みそラーメンの事が全く好きではなかったのだが、アベシというイタリアンギャングみたいな風貌の上の年目がおり、なかば引きずられながらよく連れていかれた。毎回いやだいやだ、と思いながら完食していたが(完食しないと上の年目にどやされる)、5回目くらいから、やや、おいしいのではないか、と私の脳の思考回路は破壊され、いつからか、アベシ、山岡屋に参じましょう、と自ら口にするほど好きになったのだ。今だに赤い看板を見るたびによだれが出る始末だ。継続は力なり。

ちなみに、料理が美味い、と皆から評判の友人知人は、全員山岡屋の辛みそラーメンのファンであった。なので、たぶんおいしいことは間違いない。数学的帰納法ダネ。

 

話がそれたが、最近アベシと会う機会があり、辛ラーメンの話題になった。アベシも辛ラーメンのファンであるという。当然だ。彼は辛いものと勝つことに目がないのだ。

辛ラーメン単体では少し物足りないですよね、と私が口にすると、深い共感を得られたため、どのようにアレンジしているか聞いてみた。これは、あわよくば自分の鶏ガラだしアレンジを披露しようという狙いがあっての質問。いわば会話の伏線である。

会話で重要な事は、自分の披露したい話がある場合、いきなりそのことを話すと、あ、ふーん、で終わってしまう事が多い。披露したい話がよっぽど面白いか、話し方がうまくないと、単騎での突撃は不発に終わることが多い。そのため、それに関連する話題、つまりは川の流れに例えると上流の話題を出し、先に相手に話をさせて、いよいよ中流ほどで自分の話を披露する。相手から質問が来ると最高にグーだね。すると、下流ではさらに思いもよらない発展をし、盛り上がるのだ。とはいえ、これは自分の思い通りの中流に行かず、違う方向で盛り上がるというデメリットがあるが、まあ、そういう時はそういうときでよしとしよう。このようなテクニックを諸君は覚えておいて損はないだろう。

 

そのような思惑でアベシにアレンジ方法を聞いたところ、

「トマト缶を丸々ぶち込む」

まったく自分を恥じました。鶏ガラをちょいと加えることをアレンジだと思ってた自分が。詳しく話を聞くと、アベシは妻帯者で、戸籍上妻にあたる人物がトマト缶をこよなく愛しているらしく、辛ラーメンにもぶち込み始めたとか。それを見たアベシは、頭がおかしくなったのか、と思ったらしいが、ここがさすが妻帯者、自分も試したところ病みつきになったとか。そこから、鶏ガラの話に戻すのが恥ずかしかった私は、辛ラーメンの話題からアベシの夫婦話に話題をすり替えたのは言うまでもない。

ちなみにアベシのおすすめのトマト缶はカルディの物らしい。さすが妻帯者。

 

後日、私はアベシに聞いた辛ラーメンの食べ方を試すか葛藤があった。だって、トマト缶を入れておいしくなかったら。私の鶏ガラアレンジでおいしいのは分かり切っているのに。一食分悲しい気持ちになる。しかし、アベシの言うトマト缶アレンジがおいしかったら?また一つ私の世界は広がるだろう。

そこで折衷案として、トマト缶を1/3入れてみることにした。だって一缶丸々は明らかに多いじゃない。恐る恐るいれ、更に火にかけて酸味を飛ばす徹底ぶり。

ひとくち食べると、おいしんですよこれ。他の料理に例えると酸辣湯(さんらーたん)みたいな感じ。それより酸味がマイルドで、非常においしいのだ。さらに私はチーズをかけてみたくなった。カップヌードルのチリラーメンとかそんなのがあったことを思い出したからだ。これがまたおいしい。もはや辛ラーメンの原形はとどめてない。ピザだね。ピザラーメン。これが。何事もチャレンジすることが、ポジティブな人生の向き合い方だと思わないかね、諸君。

 

これは是非世間ではやってもいいだろう。何故なら、私は山岡屋の辛みそラーメンをおいしいと感じているからだ。私の舌に狂いはない。

 

試した、という方は是非感想をお知らせ願いたい。アベシに言ったら喜ぶと思うの。

 

今日はここまで。

 

P.S.

少し前に東京の不動産屋に一宿の恩として新大阪駅で販売しているどて煮を手土産として持って行ったことがあった。正確には「kobe 伍魚福」の「牛すじ ぼっかけ」という商品である。それを彼はいたく気に入ってくれたらしい。ありがたいねえ。ちなみに大阪らしいもの、と思ったが、どうやら神戸の物らしい。まあ、大阪も神戸も一緒でしょ。と、関西の人に言うと怒るのだ。注意されたし。

その牛すじぼっかけを東京の不動産屋に送付しようと思う。ので、住所をこっそり教えておくれ。

 

文責:おがさわら(30、大阪、無職)