俺はなんばんぼし

釣具屋と不動産屋の

第41回「三つ子の魂はね、百までよ」

三つ子の魂百まで、ということわざだか慣用句があるが、これはまこっとその通りであるなと思う。最近歯の調子が悪い。

事の発端は、以前外国のバリ島というところに旅行で行った時の事。もう5年近く前である。バリ島は夜市という、道端で夜に展開される出店のようなところが活況で、毎日がお祭り騒ぎである。そこで果物を買って食べるのが滞在時の私のお気に入りとなっていた。様々な果物がカットされ串刺しにされており、食べ歩きできるという旅行者のニーズに応えたものであった。バリ島はインドネシアかどっかで、亜熱帯だか熱帯だかの気候なので、果物がおいしいのだ。スターフルーツとか果物の王様と言われるドリアンを初めてそこで食べた記憶がある。

ちなみにドリアンは臭いというのは本当であった。とかく匂いが強烈で、おえおえ言ってしまう。確かに独特の甘みがこれまた強く、味は確かにいいが、匂いも含めて味だと思うので、総合評価としては、もう一度は食べなくていいかな、という感じ。その時も、やあ、これが王様ね!とおいしいおいしいと強がりながら、ありがたがって食べていた。

最終日も近くなった夜も当然のことのように果物を買って食べた。その際、口に、ガっ!という衝撃が走った。刹那走る激痛。どうやら果物のなにかに種子が含まれており、気が付かず思い切り噛んでしまったのだ。私は叫んだね。叫んだ。町中の人々の視線がスポットライトになり私を照らし、私は踊った。踊ったね。町中の人も一緒になって踊っていた。

少し落ち着いたところで、口の中をベロを走らせたところ、硬い石みたいなのが散見された。ざらざらとした感触。右奥の歯が砕け散っていたのだ。アミーゴ。

一緒に滞在していた人物は私の頭がおかしくなったと思って心配してくれていたが、歯が砕けた事を言うとなおさら心配してくれた。

とはいえ、不思議と痛みはするする引いていき、10分もすると、正常に戻っていた。痛すぎてホテルに戻ってふてくされるという最悪のシナリオは回避できたのだ。(このバリ島で歯が砕けた話はいたるところでよくしており、このブログにもすでに書いたかもしれない。その際は重複ご容赦)

 

帰国後、歯を治療するか悩んだ。しかし、痛くないため、放置を選択した。当時は大学生で金もなく、普通にものも噛めるから当然の選択であった。今もこの選択に後悔はない。まったく問題なく過ごしていたが、今年の序盤に例の砕けた歯が痛み出した。ずきずきと痛んだ。いよいよ踊りだしたな神経ちゃん、と思いながら、重い腰を上げて歯医者に赴いた。

治療を受けたところ、歯は虫歯菌に侵食されていたものの、抜歯の必要等はなく、詰め物をして事なきを得ることが出来るとのこと。ここで一つ選択を迫られた。歯の神経を残すか否か。歯の神経を取ってしまうと、詰め物の土台となる歯が弱くなり、将来的にインプラントをしなければならないリスクがあるらしい。そんなリスクを聞かされた私は、神経ちゃんを残す選択をした。リスクもさることながら、なんとなく30年余りともに過ごした神経を失う事を惜しく思ったのだ。なるべく天寿を全うするまで欠損なく人生を送りたい。そんな思いの元の決断である。これで、私は歯痛とはお別れだと思った。

私は、歯痛が起きると熱心に歯を磨くのだが、何もない時は、歯磨きをないがしろにしてしまう悪い習性がある。何か根を詰めていたり、寝おちしたりしてしまったりいろいろであるが、歯磨きの優先順位は結構低いのだ。

これは教育のせいではない。毎日歯を磨きなさい。歯は一生ものです、と教育を受けた。にもかかわらずこのざまだ。これはもはや私の習性なのだと思う。

この久方の歯痛の時も熱心に歯を磨いた。歯医者の治療というのは割合数週間に及ぶことが多く、この間、毎食の後必ず歯を磨いていた。だって痛いんだもの。そして誓った。この歯磨きを習慣化するぞ、と。この痛み、忘れないぞ。と

そして無事治療を終えると、歯痛はなくなり、日常が戻ってきた。すると私はまた歯磨きをないがしろにし始めたのだ。

5月のゴールデンウィークの事。例の右下奥歯が強烈に痛み出した。もう、過去前例がない痛み。ゴールデンウィークに開業してる気合の入った歯医者はなく、痛みに耐えるしかなかった。もう日に日に痛みが増し、顎から頭蓋骨に至るまですべてが痛くなった。もう地獄。市販のロキソニンを買占め、がぶ飲みしたのだ。ロキソニンはすごい。結構効く。とはいえ、夜も眠れぬ日々を過ごした。このとき、歯磨きの習慣を行うという誓いを思い出し、痛く後悔した。ああ、なんて自分は愚かなんだ。あの痛みを忘れたのか、と泣きながら歯を磨き、ゴールデンウィークを呪った。

ゴールデンウィークが開け、いの一番に歯医者に駆けだした。早くこの痛みから解放されたい。歯医者に見せるとどうやら虫歯は外からは見えないが歯茎が腫れている。この歯茎の腫れが原因かもねと。しかし私は訴えた。これはもうとんでもない痛み。必ずや詰め物の中の神経が暴れている。私が残した神経が。早く詰め物を取って根治をしてくれと。しかし歯医者は聞く耳持たず、歯茎をぐりぐりして様子を見ましょう、と抗生物質と処方箋のロキソニンを出して、私を帰したのだ。

一日様子を見てまた歯医者に赴いた。痛みは引かず、増すばかり。涙ながらの陳情に歯医者も折れたのか、詰め物を取ってみましょうと、となった。ちなみにこのときレントゲンを撮ったのだが、高いね、アレ、治療費が。銀歯を詰めていたのだが、あれって削るしかないのね。ゴリゴリ削る。結果、原因は詰め物の中で菌が繁殖し、神経が腐っていたらしい。その断末魔があの痛みだったのだと。だから言ったろバカチンが、と思ったが、薄れる痛みに感謝をしたのだ。そして、再び誓った。歯磨きを怠らないと。

それから、治療が再開し、今も治療中なのだが、途中で通院をすっぽかしてしまった。痛みがなくなったからだ。そして、まったく愚かなことに、またもや歯磨きを怠っていた。そして昨日、またしても治療中の歯が痛み出した。もうね、本物のバカチンは私です。あんなに痛くて、歯磨きを丁寧にするって誓ったのに、痛くないってだけで、すぐに歯磨きを怠る。

 

これは多分一生続く気がする。治療が終われば一安心、歯磨きを誓い、また反故にする。そして痛む歯。痛みと愚かな私のイタチごっこ。どうしたもんかね。

 

今日はここまで。反省の意を込めて、ここに記させてもらった。そしてここに誓います。歯を大切にします。ああ、すぐないがしろにするんだろうな。まいったね。

 

 

 

文責:おがさわら(大阪、30、無職)