俺はなんばんぼし

釣具屋と不動産屋の

第22回「怒り、そして遊ぶ」

私は怒っている。それもひどくだ。ひどく、怒っている。

それは、鳥取砂丘に足をのばし砂が描く悠久さに身を任せたりすなば珈琲なる鳥取県ではスターバックスをしのぐご当地カッフェでまたーりするなど非常に有意義な一日を過ごした2019年12月8日日曜日21時、帰り道で起こった。信号無視で警察に捕まったのだ。

一日車の運転をしていた私は少々疲れていたのもある。確かに信号を無視した。はっきり言って私の不注意である。少々私の言い分も聞いてほしい。信号無視をした場所は十三駅付近の北野高校横の交差点で、私は淀川を渡るバイパスからその信号のある交差点に侵入した。その交差点は3つの信号がある。1つは私がいたバイパスから続く道の信号。2つ目は私のいる道と交差する道の信号。3つ目は私のいた道と平行にある側道の信号だ。信号の変更周期は、バイパスからの道、交差する道、側道の信号、バイパスからの道の信号・・・といった具合である。問題は私のいた道と側道の道は並行しており、信号も並んでいるという点である。私は側道の信号が青になったのを見て、自分のいる道の信号だと勘違いして発進したのだ。交差点を曲がったとたん、光るパトライト。うなるサイレン音。拡声器で増幅された警察官の声。

正直この時点ではパニックである。道交法を破った自覚がないのだ。車を止め、近づいてきた警察官に事を聞いて初めて信号無視をしたという事実に気が付いた。その瞬間は、ああ、やってしまったな、と思ったが、免許証を手渡し、警察官が書類作成でパトカーに戻っている待ち時間に冷静になると、あることに気が付いた。パトカーとそんなに都合よく出くわすかね。

ここで私はネズミ捕りに捕獲されたことを悟ったのである。

私は切符を切られたことや罰金を払うことに腹を立てているわけではない。もちろん罰金9千円は痛いが、私が信号無視をしたのは事実である。事故が起こっていてもおかしくはなかった。捕まった事は仕方がないと思う。しかし、やはりネズミ捕りがいるという事は、あの交差点の信号は間違えやすく、同様に信号無視をしてしまう車が多いからだろう。そこでネズミ捕りをするという事は、へ、今日も馬鹿な連中が信号無視するからとっ捕まえてやろうぜ、へへ、という国家権力の明確な悪意を感じてしまうのだ。お前は信号無視をしたんだぞ、という正論正拳突きを不意打ちで食らったのだ。信号無視したのは私、悪意はないけど、悪いのは私。悪意がなければ何してもいいと思っているのか!と大声をあげる人がいると思うが、そうじゃない。私は、羊のようにほそぼそと善良に生きる弱者に対する権力が放つ悪意に怒っているのだ。

「間違えるな注意」というプラカードもって交差点に突っ立ってろってんだ、ばかたれめ。

ところで、信号無視で捕まった時、停車した私の後ろにパトカーが止まっていた。警察に止められたことがある人は想像がつく一般的な光景だが、そのパトカーの後ろに白いトラックが止まっていることに気が付いた。なんだか様子がおかしいぞ、とルームミラーで様子を見ていると、どうやら白いトラックの運転手も同様に信号無視で捕まっているらしかった。さては信号無視する私につられて発進してしまったのだろう。深夜の大阪で根こそぎやられたらしい。いやはや、どこのどなたか存じませんが、巻き添えにしてしまったこと、ここに謝意を表明したい。ぼーっと信号無視をしてしまい本当に申し訳ない。もちろん文句を言われないように手続きが終わった後颯爽と立ち去った事は言うまでもない。

 

さて、いささか興奮してしまったが、本日のお題は、遊び。しかし、なんだか書ききってしまった気分なのでここで今回は終わりにしたいと思う。お題を外す、というのもお遊びの一つなのではなかろうか。

 

次は東京の不動産屋。お題は、「クリスマスに感じるのは切なさなのかやるせなさなんのか」としましょう。季節感があって大変よろしい。

 

文責おがさわら(大阪、28歳)