俺はなんばんぼし

釣具屋と不動産屋の

第56回 代謝の雑感

過日。床に胡乱な物体が落ちているのを発見したので拾い上げてみると、果たして何かのファーだった。Furって「毛皮」って意味だと思うけど、とにかくそこにあったのは黒い羽毛のごときファー。部屋の中でファー、といえば思いつくのはむくむくした暖房着か布団くらいなもので、もしかして猫の爪でもひきかかって中身がまろびでたのかしら。なんて思いを巡らせど見当がつかなかったが、ふと寄ってきた猫のしっぽを見ると先端が禿げていた。そういえば、先程ファーを見つけたその地点で猫に躓いたような気もする。その時にこの黒い羽毛のごときファー、猫の毛が抜けたのだろう。その刹那、猫はぎゃあともぴいとも言わなかったので痛みを感じなかった、つまり自分が猫の毛のみを器用に踏みつけたと同時に猫も動いたために、自分の体重で押さえつけられた猫の毛がそこに残ったというわけなのだろう。毛が抜けたことにも気づいていないようで、猫はへらへらとしている。気づかないくらいに自然に抜いてしまったとはいえ、申し訳ないことをしたと思う。女の子だし。

 

ところで、献血などに行って自発的に血液・体液を不足させると代謝が良くなる、という話を聞いたことがある。この話から考えられることは、健康な生き物は体内であれ体外であれ欠損や不足した箇所があると、その穴を埋めるべく新陳代謝を高めるかなんかしてエネルギーをよく消費するようになる、ということで、それは猫の毛についても同様のことが言えるのではないだろうか。たとえば、猫が太って難儀そうにしているからなんとか痩せさせたい、と思って全身剃毛を施すとする。すると、その子豚のような猫は失われた毛をなんとか早くそろえようとして、厖大なエネルギーを消費し、結果として痩身に至る。そんなこともあるのではないだろうか。剃毛ダイエット。いけるかも知らん。
動物愛護団体の人に怒られるだろうか。

 

文責:不動産